症例解説
軟部外科「 乳腺腫瘍 」
乳腺腫瘍とは
乳腺腫瘍は犬猫で最も多くみられる腫瘍のひとつです。避妊手術を受けていない犬では全腫瘍の50%を占め、猫では17%ととても高い発生率です。犬では左右5対、猫では左右4対の乳腺が胸から下腹部まで広がっており、乳腺のどこでも腫瘍が出現します。犬では良性と悪性が1:1、猫では80-90%が悪性です。

(乳腺腫瘍の外観:左が犬、右が猫です。巨大なしこりがあり、一部穴が開いている部分もみられます。)
早い段階で避妊手術を行うことで、高齢になってからの乳腺腫瘍の発生率を減らすことができます。最初の発情が来る前に避妊手術を行うのが最も予防効果が高いと言われています。
診断
- 身体検査:乳腺にしこりができているのを触診で確認します。しこりの大きさや個数、リンパ節の腫れなどを診ます。
- 胸部X線検査:乳腺腫瘍では肺への転移がしばしば起こるために、X線検査で転移の所見を確認する必要があります。転移があった場合は手術による完全摘出は不可能で、治療方針に大きく影響します。
- 細胞診:乳腺のしこりやリンパ節の細胞を細い針で採取し、顕微鏡で確認します。
- 血液検査など:全身の状態を評価し、合併症を探ります。麻酔や手術のリスクに関係する重要な検査です。
- 病理検査:手術で摘出した乳腺のしこりやリンパ節を病理検査センターに提出し、乳腺腫瘍が良性か悪性か、手術で取り切れているかどうか、リンパ節への転移などを確認します。この結果によって抗がん剤を追加する必要性や術後の見通しが明らかとなるため、とても重要な検査です。
治療
- 手術
乳腺腫瘍の治療では手術による切除が基本となります。腫瘍のできた部位や麻酔前の検査結果によって手術の範囲を決定します。- 単一乳腺切除術:腫瘍と周囲の1乳腺だけを切除します。
- 領域乳腺切除術:リンパ管や血管を考慮して隣接する乳腺を切除します(犬では1-3乳腺、3-5乳腺がセットになります)。
(領域乳腺切除術の跡:右の第3-5乳腺を切除しています。)
- 乳腺全切除術:左右どちらかの乳腺をすべて切除します(犬では1-5乳腺、猫では1-4乳腺)。猫の乳腺腫瘍はほぼ悪性なので、基本的には全切除が選択されます。
(乳腺全切除術の跡:右側の第1-5乳腺をすべて切除しています。左側に3か所の結節切除の跡があります。)
- 結節切除術:腫瘍周辺を最小限で切除します。治療のためというよりも病理検査で良性悪性の判定が目的になります。悪性であれば広範囲の切除を再度行わなければなりません。
※炎症性乳癌:激しい炎症と痛みを伴った悪性度の高い乳腺腫瘍の一種です。発見時にはすでに転移しており、全身の状態も悪いことがほとんどです。手術をすることで延命効果がないばかりか、合併症が高率に起きるため基本的に手術は推奨されていません。
- 抗がん剤療法
X線検査などで転移が確認された場合や病理検査でその可能性が判明した場合は、体に残っている腫瘍に対して抗がん剤を投与することがあります。
〒861-4115 熊本県熊本市南区川尻6丁目8-7
診療時間
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(手術日のため休診)毎月第2・第4 火曜午後
※受付はAM・PMとも診療終了10分前までとさせていただきます
※12:00~16:00は手術時間帯となっています
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