熊本市南区 動物病院 烏城ペットクリニック | 犬・猫・うさぎ・フェレット・ハムスター
症例解説

神経外科「 椎間板ヘルニア:胸腰部 」

椎間板ヘルニアとは
背骨の間にありクッションの役割をしている椎間板の一部(椎間板物質)や全体が飛び出し、脊髄神経を圧迫することで痛みや麻痺が起きる病気です。小型犬ではダックスフンド、トイプードル、ペキニーズ、シーズー、コーギー、チワワなどに多く、大型犬ではシェパード、ラブラドール・レトリバー、バセットハウンドに多発します。
椎間板ヘルニアには複数のタイプがあり、椎間板の中身(髄核)が飛び出す「ハンセンⅠ型」は通常急性発症で、突然立てなくなることも珍しくありません。対して、椎間板全体が徐々に飛び出す「ハンセンⅡ型」は高齢の大型犬やミニチュア・シュナウザーなどに多く、数カ月かけてゆっくりと足腰が弱くなります。猫でも発症しますが、犬に比べるとまれです。
症状
胸腰部椎間板ヘルニアでは背中の痛みと後足の麻痺やふらつきが主な症状となります。後足の麻痺の程度と痛覚から5段階の重症度(グレード)に分けられており、グレードによって回復率が異なるため、内科療法と手術どちらを選択するかに大きな影響を与えます。特殊な状況を除いて、左右の足に異常がみられることが多いです。
グレード1 背中の痛みはあるものの、後足の動きに問題はみられません。抱きかかえると痛がる、段差を上りたがらない、震えて動かないなどの症状で気づかれます。
グレード2 後足のふらつきや軽い麻痺がみられます。自分で歩くことはできます。
グレード3 後足の麻痺が強くなり、足を動かすことができるものの自分で歩くことは難しく前足だけで前進します。
グレード4 後足は完全に麻痺し、足を全く動かすことができません。痛みを感じることはできます。
グレード5 後足が完全に麻痺していることに加えて、痛みを感じなくなります。
それ以外に排尿排便のコントロールが難しくなる症状や、まれに前足が伸びきる症状(シフ-シェリントン徴候)がみられることもあります。
  • 進行性脊髄軟化症:グレード5 の犬の5-10% に発生すると言われる致死的な病状です。胸腰部の脊髄神経の壊死が前後の脊髄に広がり、最終的に呼吸麻痺を起こしてほぼすべての患者が1 週間程度で死亡します。手術前に発症に気づけることもあれば、手術後に発症することもあるので重症患者では注意が必要です。
診断
  • 神経学的検査:様々な神経の反応を評価して、病変がどのあたりにあるかを絞り込みます。
  • レントゲン検査:椎間板ヘルニアと同じ症状を出す他の病気がないかチェックすることが主目的になります。飛び出した椎間板物質が確認できることもありますが、基本的に脊髄と椎間板を映し出すことはできません。
  • 脊髄造影検査:脊髄周囲に造影剤を満たし、脊髄を圧迫している椎間板ヘルニアをレントゲンで描出します。椎間板ヘルニアを起こしている部位を特定するために実施されます。
  • MRI検査:脊髄や椎間板の状態を詳細に評価することが可能で、椎間板ヘルニアの診断では最も理想的な検査です。

(脊髄造影検査とMRI 検査:矢印の部分が椎間板ヘルニアを起こし、脊髄を圧迫している病変です。)

治療
  • 内科療法:グレードが低い患者では内科療法で高い回復率が期待できます。絶対安静を主体として、痛み止めやサプリメントなどの投与を行います。
  • 手術:グレードが高い患者や内科療法で回復が十分でない患者、内科療法中に悪化がみられた患者では手術が選択されます。
    • 片側椎弓切除術:脊髄神経を取り囲む背骨の左右いずれかの一部を削り取り、脊髄を圧迫している椎間板物質を摘出するオーソドックスな方法です。
    • 小範囲片側椎弓切除術:背骨の安定感がないと予想される場合(例えば、以前に手術で反対側の骨を削っているなど)によく行われます。背骨を削る範囲が狭く、背骨の安定感への影響は少なく済みます。
    • 部分的側方椎体切除術:時間が長期経過したハンセンⅠ型やハンセンⅡ型の患者では飛び出した椎間板物質が脊髄神経に癒着して摘出が難しいため、片側椎弓切除術では脊髄の圧迫を解除できません。この手術法は椎間板物質の真下の背骨を一部削り取り、椎間板物質を下に陥没させることで脊髄の圧迫を減らす治療法です。通常の方法よりも高度な専門的技術が必要になります。
  • (手術画像:黄矢印のかたまりが飛び出した椎間板物質です。緑矢印が脊髄です。)
  • (手術方法によって背骨を削る部位や範囲が異なります。)

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